インターネットの普及により、ポルノグラフィ(ポルノ)へのアクセスはかつてないほど容易になりました。多くの人々にとってそれは日常的な気晴らしとなっていますが、最新の神経科学および心理学の研究群は、ポルノの習慣的な視聴が脳の報酬系を書き換え、現実のパートナーとの関係に深刻な悪影響を及ぼす可能性を示唆しています。
The Conversationに掲載された記事では、ポルノが単なる「道徳的な問題」ではなく、生理学的および心理的な健康リスクであることを示す証拠がまとめられています。
脳を「薬物中毒」のような状態にするドーパミン過剰
研究によると、ポルノの視聴は脳内の神経伝達物質であるドーパミンの急激な分泌を引き起こします。これは薬物乱用者が経験する反応と非常に似ており、以下のような悪循環を生み出します。
- 報酬系の脱感作: 頻繁に強い刺激(ポルノ)にさらされると、脳のドーパミン受容体が減少し、通常の刺激では喜びを感じにくくなります。
- 耐性の形成: 同じレベルの興奮を得るために、より過激で異常なコンテンツを求めるようになります。
- 前頭前皮質の機能低下: 衝動を制御し、意思決定を行う脳の部位(前頭前皮質)の機能が低下し、視聴を止めようと思っても止められない状態に陥りやすくなります。
「超常刺激」が現実のパートナーへの興味を奪う
記事では、ノーベル賞受賞者のニコ・ティンバーゲンが提唱した「超常刺激(Supernormal Stimulus)」の概念が引用されています。生物は、自然界に存在するものよりも「大げさな特徴」を持つ偽物に強く惹かれる性質があります(例:本物の卵よりも、巨大で派手な偽の卵を温めようとする鳥など)。
ポルノは人間にとっての「超常刺激」として機能します。画面上の完璧な体型や演出された行為は、現実のパートナーや性行為よりも脳にとって「報酬」として魅力的に映るため、現実の性生活に対する満足度が著しく低下します。
人間関係への具体的なダメージ
ポルノの視聴が人間関係に及ぼす影響について、研究は以下のリスクを指摘しています。
- ポルノ誘発性勃起不全(PIED): 若い男性の間で、身体的な問題がないにもかかわらず、現実のパートナーに対して勃起不全を起こすケースが増加しています。これは脳が画面越しの刺激に条件付けされてしまった結果です。
- 関係満足度の低下: ポルノを頻繁に視聴する人は、パートナーとの関係に対するコミットメントが低く、離婚や破局に至る確率が2倍になるというデータもあります。
- 非現実的な期待: ポルノによって形成された歪んだ性的スクリプト(台本)をパートナーに期待してしまい、それが満たされないことへの不満が募ります。
記事は、ポルノの影響を軽視せず、脳の可塑性(変化する性質)を理解し、デジタルコンテンツとの付き合い方を見直す必要性を訴えています。

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