「パートナーとの性的な相性は最初から決まっている運命のようなものだ」と考えるか、それとも「努力や経験を通じて徐々に育んでいくものだ」と考えるか。この「性的相性に対する信念」の違いが、カップルが性的なトラブルに直面した際の乗り越えやすさに大きく影響するという研究結果が発表されました。
この研究は、コネチカット大学のコミュニケーション・心理学研究チームが実施したもので、学術誌「Journal of Social and Personal Relationships」に掲載されています。
「性的運命信念」と「性的成長信念」とは?
研究チームは、恋愛関係における性的な信念を以下の2つのタイプに分類しています。
- 性的運命信念(Sexual Destiny Beliefs):
性的な相性は生まれつき決まっているものであり、「運命の相手」かどうかが重要だと考える思考パターン。「体の相性が悪いのは、そもそも二人が合っていない証拠だ」と捉える傾向があります。 - 性的成長信念(Sexual Growth Beliefs):
性的な満足度は、二人の努力や協力によって構築・維持されるものだと考える思考パターン。「性的な問題は二人で解決すべき課題だ」と捉える傾向があります。
研究チームは、これらの信念が、パートナーが「性機能障害(EDや性交痛など)」を打ち明けた際に、関係の未来をどう予測するかにどう影響するかを調査しました。
実験:パートナーからの深刻な告白をどう受け止めるか
研究では、交際期間が6ヶ月未満の新しい恋愛関係にある461人の参加者(米国、英国、カナダなど)を対象にオンライン調査を実施しました。
参加者は、「パートナーから性機能障害(勃起不全や性交時の痛み)を打ち明けられる」という架空のシナリオを読み、その後、以下の項目について回答しました。
- 潜在的な性的信念: 成長マインドセット(「関係維持にはメンテナンスが必要」)か、運命マインドセット(「トラブルは破局の予兆」)か。
- 性的共同体強度(Sexual Communal Strength): 見返りを求めずにパートナーの性的ニーズを満たそうとする意欲。
- 関係の繁栄に対する期待: この困難を乗り越え、関係がより強固になると信じられるか。
「努力で良くなる」と信じる人はトラブルに強い
調査の結果、「性的成長信念」を持つ人は、パートナーの性的トラブルに対して非常に前向きな反応を示すことがわかりました。
成長マインドセットを持つ人は、「性的共同体強度」が高くなる傾向がありました。つまり、パートナーの悩みに対して「チームとして協力し、支え合おう」という意欲が高く、その結果、「この問題をきっかけに二人の関係はより良くなるだろう」と楽観的に予測することができたのです。
「相性は運命」と信じる人は関係の危機を感じやすい
一方で、「性的運命信念」を強く持つ人は、パートナーの性的トラブルに対してネガティブな反応を示しました。
彼らは、「性的な問題が起きた=運命の相手ではなかった」と解釈しやすく、トラブルを乗り越えて関係が良くなるというイメージを持ちにくいことが判明しました。また、成長信念を持つ人とは異なり、「パートナーを支えよう」という意欲(共同体強度)との関連性も見られませんでした。
まとめ:マインドセットが二人の未来を変える
この研究は、あくまで架空のシナリオに基づいたものではありますが、「性的な相性は作っていける」と信じることが、困難な状況下でのカップルの回復力(レジリエンス)を高める鍵になることを示唆しています。
もし現在のパートナーとの性的な不一致に悩んでいる場合、「相性が悪いから別れるべきか」と考える前に、「これは二人で解決できる課題か」と視点を変えてみることで、関係の未来が変わるかもしれません。
引用元:Is sexual compatibility fated or forged? Your answer may shape your relationship’s future – PsyPost


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